コラムColumn

慢性的な下痢でお悩みの方は結構多くいらっしゃいます。原因は感染や免疫異常、ストレスなどいろいろあり、それぞれの原因に応じて対処していくのですが、中には原因が分かりにくいものもあります。
そこで今回は慢性下痢の原因の一つで、あまり馴染みがないため実は見逃されているかもしれない腸管スピロヘータ症という病気についてお話したいと思います。

腸管スピロヘータ症とは
腸管スピロヘータ症は、ブラキスピラ属の細長いらせん状の細菌が大腸粘膜に付着して起こる感染症です。
人獣共通感染症(動物と人との間で自然に移行する病気・感染症のこと)で、感染した犬や豚などの便に汚染された手や食品を介して口から感染します。
慢性下痢の患者さんのうち、0.7%に認められたという報告もあり、頻度は多くないですが、慢性下痢の原因として念頭に置くべき疾患と考えられます。
症状
多くの感染者は無症状ですが、以下のような症状を起こすことがあります。
・慢性的な下痢
・腹痛や腹部不快感
・時に血便や粘液便
診断
大腸内視鏡検査では、粘膜はほぼ正常に見えることが多く、異常があっても、粘膜の浮腫や発赤といった非特異的な所見程度で、内視鏡所見から腸管スピロヘータを疑うことは困難です。
そのため異常を認めなくても、粘膜組織を採取して顕微鏡検査を行うことが重要で、検査では粘膜表面に一列に並んだ線状の細菌がびっしり付着しているのが確認されます。
便培養検査では、菌の増殖がとても遅いため、めったに検出できません。
治療
無症状例では、治療を行わなくても自然経過で改善することがあります。有症状例に対しては、メトロニダゾールという抗菌薬を10日間服用します。服用を開始すると、すぐに下痢が改善してくる方が多いです。
まとめ
大腸粘膜に異常がなく、下痢型過敏性腸症と診断されている方の中にも、実は腸管スピロヘータ症が隠れている可能性があります。
慢性的に続く下痢には、様々な原因がありますが、腸管スピロヘータ症の可能性も考慮して、大腸内視鏡検査と組織検査をうけることが重要です。







