コラムColumn

消化器の外来をしていると、最近背中が痛むと心配されて受診される方が結構多くいらっしゃいます。何故背中の痛みなのに消化器なのかというと、大抵の方は膵臓がんを心配されています。背部痛というと膵臓がんの危険なサインという漠然としたイメージを持っておられる方が多いようなのです。
私は、大学病院、医療センター勤務時代から、多くの膵臓がんの診断・治療に関わってきましたので、今回は膵臓がんについて大まかに説明したいと思います。
膵臓とは
まずは、膵臓という臓器がどこにあるかですが、おおよそ胃の後ろにあり、大人では長さ20cmほどの細長い臓器です。お腹の中にある臓器というよりも、お腹の背側の後腹膜という部分に固定されています。
食物の消化を助ける膵液をつくり、腸管内へ排出する外分泌機能と血糖の調整をするインスリンなど、いろいろなホルモンをつくり分泌する内分泌機能をもっています。
膵臓はいろいろな機能をもつ細胞から構成されていますが、一般的に膵臓がんというのは、膵液を集める膵管上皮の細胞から発生した悪性腫瘍のことをいいます。
60歳代以降の人に生じることが多く、男女比はやや男性に多いといわれています。
日本での発生頻度は増加傾向であり、男性のがんによる死亡の第5位、女性では第4位となっています。
膵臓がんの危険因子
血縁者に膵臓がんの方がいる、糖尿病、慢性膵炎、喫煙、大量飲酒、肥満などが危険因子とされています。
症状
最も多いのは腹痛・背部痛で、黄疸(15%)、その他体重減少、糖尿病の急激な悪化などがあります。
腹痛・背部痛
腫瘍により膵管がつまり、膵管内圧が上がることで、慢性的に炎症が起こり、みぞおちや背中の痛みを生じます。位置的に胃の症状と思われることも多いのですが、長く続く場合は膵臓がんの症状としても注意が必要です。また、腫瘍が大きくなると背側にある神経を圧迫したり、浸潤したりすることで、腹痛や背部痛となることがあります。
黄疸
膵臓の右側で膵頭部には、肝臓で作られた胆汁を十二指腸に流す胆管という管が膵頭部を貫いており、腫瘍により胆管が圧迫されることで胆汁の流れが悪くなり、眼球や皮膚が黄色くなる黄疸が出現します。
体重減少
膵臓は胃、十二指腸、大腸と接しており、膵臓の腫瘍がそれらを圧迫して、食事が摂れなくなったり、膵臓の消化液が出なくなることで、栄養の吸収が悪くなり、体重が減少することがあります。
糖尿病の悪化
膵臓がんにより膵臓の内分泌機能が落ちて、インスリンの分泌量が低下、糖尿病の悪化、出現という形で症状がでることがあります。
検査
まず当院で疑ったときには、血液腫瘍マーカー検査、腹部超音波検査、CT検査を行います。さらに精査が必要な場合は、病院に紹介して造影CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性膵管胆管造影検査(ERCP)などを行うこととなります。
治療
第一選択は手術的に切除することですが、まずは画像的に切除可能と判断されるかが、極めて重要です。
膵臓がんは近くの神経や血管への浸潤傾向が強いことが特徴であり、大事な周囲血管にすでに浸潤している場合は、切除不能となります。
ただ、中には一定期間化学療法や放射線治療を行い、腫瘍が縮小することで切除可能となることもあります。
また、すでに肝臓や肺などへの転移を認める場合は、切除不能となります。
切除不能となった場合には、根治は困難であり、主に化学療法を考慮していくこととなります。
膵臓がんは切除ができた方でも5年生存率は10%-30%程度で予後不良です。これまで様々な治療法が試みられていますが、他の癌腫に比べて生存率の改善が得られていないのが現状です。
やはり、いかに早期に発見するかが最も重要です。膵管や胆管の画像上の軽微な異常所見、糖尿病の急激な悪化などの所見があった場合に、医師の側も経験的に膵がんの可能性を疑うということが重要なのです。