コラムColumn
将来的に胃がんのリスクを抑えるという意味で、近年ピロリ菌除菌のメリットが広く周知されるようになってきましたね。
当院でも胃カメラ検査をしてピロリ菌検査陽性であった場合には、積極的に除菌治療を勧めるようにしています。
除菌には、3種類の薬を朝夕1週間内服していただくだけなのですが、その後除菌されたかどうかを確認する検査があることを、意外にご存知ない方が多いように思います。中には、確認のためにまた胃カメラ検査をしなくてはいけないと思っている方もいるようです。
1回目の除菌治療(1次除菌)での除菌率は90%程度で、必ずしも全員が成功するわけではないため、除菌判定というのは必須なのです。(薬の種類を変えての2次除菌率は98%となっています。)
そこで今回は、除菌治療後の確認方法と留意点について、お話したいと思います。
実は除菌の成否は、一見、胃とは関係ないように思われる尿素呼気試験という、息を吐くだけの検査で判定することができるのです。
胃の中のピロリ菌の有無が呼気からというと不思議に思われるかもしれませんが、胃粘膜全体を調べることができ、感度、精度が高いため、除菌判定にはもっとも適しています。
原理としては、尿素呼気試験は検査薬(13C-尿素)を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。ピロリ菌に感染している場合では、菌がもつウレアーゼという酵素により尿素はアンモニアに分解され、13Cは二酸化炭素となって呼気試験中に多く検出されます。一方ピロリ菌に感染性していない場合ではほとんど検出されないということになります。
ただし、正確な判定のために、以下のようなことに留意してください。
○ 前日の夜9時以降は絶食としてください。
食事によって胃の粘膜表面を覆われてしまい、検査薬とウレアーゼが反応しない可能性があります。
また、飴、ガム、喫煙なども厳禁です。(お茶やお水は飲んでも構いません)
○ 精度の高い検査をするため、あらかじめ検査日を予約します。
前日からの留意事項があるため、しっかり検査日を確認しておいてください。
○ 検査自体には30分ほどかかります。
前日夜から絶食のため、検査は朝に行っています。検査薬をのんでもらいしばらく横になって安静にしていていただきますので、少し時間的に余裕を持って来院してください。
○ 除菌薬を飲み終わって、少なくとも1ヵ月以上あけてから検査を行います。
薬をのむと完全に除菌されていなくても、ピロリ菌の数自体は減っており、治療後からの期間が短いと偽陰性となる可能性があります。除菌治療後十分な期間を空けることが必要となります。
○ 以下の薬剤・食品は最低2週間前から中止してください。
・PPIと呼ばれる胃薬(ネキシウム、タケキャブ、タケプロン、パリエットなど)
・抗生剤
・LG21ヨーグルト
ピロリ菌を抑制する作用があるため、偽陰性(まだピロリ菌がいるのにいないという判定)となる可能性があります。
せっかくの除菌治療ですから、できるだけ正確に除菌確認してもらいたいと思います。
意外と当日の朝にうっかり食事をしてしまったり、ガムや飴を口にしてしまったりする方がいらっしゃるのでご注意ください。