コラムColumn

暑い日が続いており、肛門周囲が蒸れやすく、かゆみや痛みで受診される方も多いです。
中には特に息んでも掻いてもいないのに、急に肛門痛を認めるようになったという方もいらっしゃいます。
肛門の痛みで代表的なのは切れ痔などの痔疾患ですが、しばしばヘルペスウイルスの感染が原因となっていることがあり、日常診療においては常に念頭に置かなくてはいけない疾患です。
そこで今回は肛門ヘルペスについて説明したいと思います。
肛門ヘルペスとは
肛門ヘルペスは単純性ヘルペス(HSV)によって引き起こされるウイルス性感染症です。単純性ペルペスには、口唇にできることの多いHSV-1と性器ヘルペスの主な原因となるHSV-2がありますが、どちらも肛門ヘルペスの原因となり得ます。
原因
肛門性交や性器からの接触感染もあるのですが、多くは子供の頃に無症状で感染して神経節に潜んでいるウイルスが、ストレスや疲れなど何らかの免疫低下により増殖して出てくる場合が多いです。先述したように単純性ヘルペスは体のいろいろな部分で発症します。
症状
発症すると以下のような症状がみられます。
・肛門にかゆみ、痛み、違和感
・肛門周囲の発赤や腫れ
・小さな水疱やびらん
・排便時の痛み、灼熱感
なかなか自分で観察することが難しい部位のため、多くの方はいぼ痔や切れ痔になったと思い込み、痔の軟膏を使っても良くならず受診されることが多いです。
診断
・症状の問診
発症時期、痛みの性状など
・肛門、肛門周囲皮膚の視診
腫れや発赤、びらん、水疱の有無の観察
・抗原キットや血中ウイルス抗体価測定
抗体価検査には結果がでるのに1週間以上かかる場合もあるので、水疱やびらんなど疑わしい所見がある場合には、結果を待たずに治療を開始することが多いです。
治療
抗ヘルベスウイルス薬(パラシクロビル、アシクロビルなど)の内服・軟膏での治療が基本であり、効果があれば数日で改善してきます。
時には帯状疱疹ヘルペスも似たような症状で発症することがあり、単純性ヘルペスとの鑑別が難しいことがありますが、治療は同様に抗ヘルペスウイルス薬の投与を行います。
再発予防のために
抗ウイルス薬で治療をしても、ヘルペスウイルスが体内から完全にいなくなるわけではありません。症状は繰り返し再発することもあるため、以下のことに注意しましょう。
・ストレス管理・十分な睡眠を心がける。
・過労や風邪などでの免疫力の低下に気をつける。
・性交渉時にコンドームなどでの感染予防を徹底する。
まとめ
肛門ヘルペスは見た目には分かりづらい場合があり、いぼ痔や切れ痔、肛門周囲膿瘍と間違えられることもあります。
恥ずかしさから受診が遅れると症状を悪化させることもあるため、腫れや痛み、水疱などを認めたら、早めに肛門科で相談するようにしてください。