コラムColumn

肺炎球菌による肺炎は、65歳以上の高齢者では入院患者の約30%を占めるほど頻度が高く、時には髄膜炎や敗血症といった重篤な全身性疾患を引き起こす深刻な感染症です。
予防法に基づいて、2014年10月より高齢者を対象としたニューモバックス(PPSV23)による定期ワクチン接種(公費補助による接種)が開始され、ここ数年でワクチンの種類が増えたため、接種戦略がアップデートされています。
今回、2025年9月に日本感染症学会/日本呼吸器学会/日本ワクチン学会合同委員会より、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(第7版)」が公表されましたので、概要についてお話したいと思います。
肺炎球菌ワクチンの種類
現時点で推奨されている主な肺炎球菌ワクチンは以下の4種類です。
肺炎球菌には90種類以上の血清型が存在しており、その中でより病原性の高い血清型に対応できるように各々のワクチンが開発されてきています。
●ニューモバックス (PPSV23)
・ワクチンの種類:ポリサッカライドワクチン
・カバーする血清型と免疫の仕組み:23種類、主にB細胞を刺激
・効果は接種後5年程度
・65歳の定期接種では、ニューモバックス(PPSV23)のみが使用されています。
●バクニュバンス (PCV15)
・ワクチンの種類:結合型ワクチン
・カバーする血清型と免疫の仕組み:15種類、T細胞とB細胞を刺激
・1回接種で生涯免疫持続
●プレベナー20 (PCV20)
・ワクチンの種類:結合型ワクチン
・カバーする血清型と免疫の仕組み:20種類、T細胞とB細胞を刺激
・1回接種で生涯免疫持続
●キャップバックス (PCV21)
・ワクチンの種類:結合型ワクチン
・カバーする血清型と免疫の仕組み:21種類、T細胞とB細胞を刺激
・1回接種で生涯免疫持続
現在の定期接種対象者
・65歳の方
・60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方
・60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
使用される肺炎球菌ワクチンは、ニューモバックス (PPSV23)のみとなっています。
推奨される接種方法
長期に免疫効果を維持するため、以下のような接種方法が推奨されています。
1. ニューモバックス(PPSV23)未接種の方
・65歳の方:ニューモバックス(PPSV23) *定期接種
・66歳以上の方:
① プレベナー20(PCV20) *任意接種
② バクニュバンス(PCV15) *任意接種
③ キャッバックス(PCV21) *任意接種
→(1~4年以内に) ニューモバックス(PPSV23) *任意接種
2. ニューモバックス(PPSV23)既接種の方
① (1年以上あけて) プレベナー20(PCV20) *任意接種
② (1年以上あけて) キャップバックス(PCV21) *任意接種
以前はニューモバックス(PPSV23)の5年毎の接種が行われていましたが、ワクチンの開発が進んだことにより、現在は推奨されていません。
まとめ
肺炎球菌による肺炎は、高齢者の原因菌として頻度が高く、重症化すると死にもつながる危険な病気であることより、ワクチン接種は非常に有用です。
近年ワクチンの選択肢が増えたたことで、より有効な接種戦略が検討され、アップデートされています。
ワクチン接種について迷われる場合は、是非ご相談ください。







