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消化器内科
2024.11.10
異常はないのに胃の不調が続くのはどうして?

何ヶ月も前から胃の不調が続き、市販の胃薬を飲んでも一向に改善せず、困り果てて来院される患者さんが結構多くいらっしゃいます。

中には、他院で胃カメラ検査もしたけど異常はないと言われ、食べたいものも我慢しているのに、これ以上どうしたらいいのかとさらに悩んでしまう方もみえます。

今回はそのような胃の不調の原因となっているかもしれない機能性ディスペプシアという病気についてお話したいと思います。

 

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシアとは、食前・食後の胃もたれ感、満腹感、みぞおちの痛み、灼熱感などの上腹部症状が慢性的に続いているのに、血液検査や胃カメラなどの画像検査をしても異常がみられない病気です。

上腹部症状で病院を受診した方の4453%に見つかるともいわれており、日常診療において比較的遭遇することが多い病気です。

では異常がないのに何故症状があるのでしょうか。

 

原因

原因として以下の3要因が相互的に関連していると考えられています。

・精神的あるいは社会的ストレス

・胃の運動機能異常

・胃の知覚過敏

胃の運動能には、胃に入ってきた食べ物をためるための適応性弛緩という機能と十二指腸にそれらを送り出す排出能という機能があります。正常の胃では、食べ物が入ってくると適応性弛緩によって胃が十分に膨らみ、しばらく貯留され、しっかり消化されてから十二指腸に送り出されていきます。

しかしながら、様々なストレスにさらされると、自律神経に影響して、この適応弛緩がうまくいかなくなります。すると胃の拡張が狭まり、多くの食べ物を受け入れることができないため、早くお腹がいっぱいになってしまうのです(早期膨満感)。

また、胃の中の圧力が高まりやすくなるため、みぞおちの痛みや食べ物のつまり感といった不快感にもつながります。

さらに、胃での貯留が悪いと、食べ物と胃酸が急激に十二指腸に流れ込みます。すると十二指腸が急激に拡張し、胃排出に対してブレーキをかけるようになるため、食べ物が胃の中でいつまでも停滞し、胃もたれを生じるのです。

他にもストレスは胃酸分泌を過剰にして胃の動きを弱め、脳で感じる痛みの閾値も下げるため、知覚過敏が生じて痛みを感じやすくなるとも考えられています。


治療

胃の不調に対して不安をもつこと自体がストレスになりますので、まずは検査をして癌や潰瘍などの器質的異常がないことを確認し、精神的に安心することが大事です。

中にはそれだけで症状が改善していく方もいらっしゃいますが、早く症状を緩和することも大切なので、胃酸分泌抑制薬、消化管運動改善薬、漢方薬などの薬物療法を同時に行っていきます。

ピロリ菌陽性であれば除菌治療をすることで胃の運動能の改善がみられる可能性があります。また、精神的な要因が強いと考えられる場合には抗うつ薬、抗不安薬を併用したりもします。

症状が改善するまでは、食事に気をつけることも重要です。

胃の動きを止めてしまう作用のある高脂肪食(揚げ物、炒め物、生クリームなど)は避けるようにしましょう。

胃酸の分泌を刺激するコーヒー、アルコール、香辛料、炭酸飲料、冷たい物などの摂取も控えてください。

よく噛んでゆっくり食べることで胃の運動が促され、時間とともに徐々に胃が膨らんで、食べ物を負担なく受入れられるようになります。

一度に十分な量を食べることができない場合は、13食にこだわらず、少なめの量で回数を増やして摂るような工夫をしましょう。

先述したように、症状を気にしすぎるとそれ自体がストレスになり、余計に病状を悪化させることがあります。検査で異常がなかったのであれば、まずは症状をなるべく楽観的に捉えることも大事です。

 

まとめ

機能性ディスペプシアの診断は、まず検査によって器質的異常を除外することが重要です。

胃の不調の原因としては比較的多くみられ、生命に関わる病気ではありませんので、症状を気にしすぎないようにしましょう。

最近は薬の開発により、薬物療法が有効であることが多くなっています。薬によっては、胃カメラ検査をしないと処方できないものもあるため、なるべく専門医に相談するようにしてください。

 


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