コラムColumn

暑くて汗を掻くこの時期には、下着の中が蒸れて、肛門のかゆみを訴える方も多くなります。
肛門のかゆみの原因で最も多いのは、拭きすぎや掻きすぎ、ウォシュレットや石鹸での洗いすぎなどによる皮膚炎なのですが、中にはカンジダという菌が関係していることがあります。
カンジダ菌は女性では膣周囲のトラブルで知られていると思いますが、肛門周囲にも感染することがあり、結構悩まされることがあります。
今回は肛門カンジダ症についお話します。
肛門カンジダ症とは
肛門カンジダ症とは真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌が肛門周囲の皮膚や粘膜で異常に増殖し、炎症やかゆみを引き起こす病気です。
カンジダ菌自体は健康な人の皮膚や消化管にも存在する常在菌ですが、免疫力の低下や皮膚の環境の変化によって増えすぎると症状が出ます。
女性では抗菌薬の使用後や妊娠中、ホルモン変動期では膣内のカンジダ増殖がおこりやすく、膣カンジダ症であれば、5人に1人の割合ともいわれており、肛門カンジダ症も女性に多い傾向があります。
症状
・強いかゆみ(夜間や暖まった時に悪化しやすい)
・肛門周囲の発赤やただれ
・発赤周囲に白色粉状物(鱗屑)や膿疱
・排便時のヒリヒリ感やしみる感じ
・長引く湿疹様の皮疹(通常の湿疹治療で改善しない)
湿潤環境で菌は増殖しやすくなるため、汗をかく暑い時期になると悪化する傾向があります。
また、以下の要因で発症しやすくなります。
・抗生剤の使用
皮膚の常在菌のバランスが崩れ、カンジダ菌が増えやすくなる
・免疫力の低下
糖尿病、がん治療、ステロイド使用、HIV感染など
・湿潤環境
肛門周囲の蒸れ、下剤やおむつ使用で湿度が高い状態
・皮膚バリアの低下
肛門周囲の皮膚炎や肛門疾患術後など
診断
見た目だけでは湿疹や痔のかゆみと区別が難しいことがあります。
・視診
発赤・白色付着物(鱗屑)・皮膚割れなどの有無
・真菌検査
皮膚や分泌物を採取して顕微鏡でカンジダを確認
・培養検査
分泌物を採取して、培養検査で菌種を特定
治療
一般的な皮膚炎によるものであれば、ステロイド軟膏で治療をしますが、カンジダが原因の場合は、ステロイドにより免疫が低下して逆に悪化させてしまいます。
基本的には抗真菌クリームなどの外用薬を使用し、2~3週間で完治します。
また、下着は通気性の良い素材を選び、濡れたら変えるなど、蒸れた環境の改善にも心がけましょう。
夜中のかゆみが強い場合は、寝ている間に無意識に掻かないよう抗ヒスタミン薬を併用したりすることもあります。
まとめ
カンジダは皮膚炎によるかゆみと治療に使う薬が異なりますので、自己判断で薬を使用すると悪化する可能性もあります。
症状が続く時はカンジダなど真菌感染も念頭におき、早めに肛門科や皮膚科を受診するようにしてください。
特に暑くてお尻が蒸れやすいこの時期は、菌が繁殖しやすくなるのでご注意ください。