コラムColumn
肛門科外来をしていると、急に肛門が痛くなった、腫れてきたという症状で来院される方が毎日のようにいらっしゃいます。
一番多い原因として血栓性外痔核という病気がありますので、今回はそれについて説明したいと思います。
血栓性外痔核というのは、肛門に炎症が起きて、1cmぐらいの血栓(血豆)ができて、痛みや腫れが生じる病気です。炎症ではありますが、通常発熱はありません。自分では普段どおりの生活を送っていたのに、急に痔になったといって、びっくりされるようです。
座るのも歩くのもつらい状態になることもあります。中には肛門に押し込もうとする方もいらっしゃいますが、血栓性外痔核は肛門出口近くの皮膚の下にできたものですから肛門には戻りません。
ではなぜ血栓(血豆)ができるのでしょうか。
血栓性外痔核は、肛門の周りの血流が悪くなり、血液の流れが滞るために血液が固まって発症します。
主な原因としては、以下のようなことが挙げられます。
・長時間立ちっぱなしや座りっぱなしという同じ姿勢
・重い物を持ち上げる作業
・腹圧がかかるような激しい運動
・排便時の長時間のいきみ
・妊娠による腹圧の上昇
・激しい咳 などです。
中には、本人の自覚としてはこれらのいずれも心当たりがないということもあります。
治療
血栓性外痔核は、多くの場合手術は必要なく、保存的治療で治ります。
抗炎症作用のあるステロイドの入った注入軟膏と肛門の血流を促す内服薬を併用します。
痛みは数日で改善してきすが、腫れが完全にひくのには2週間から4週間ほどかかると思っておいてください。
ただし、以下のような場合には、血栓を除去する治療を考慮することもあります。
・症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合
・血栓が大きく、縮小までに期間を要すると考えられる場合
・経過をみていても、なかなか縮小が得られない場合、
・同じ部位で繰り返してできる場合 など
治療は外来で局所麻酔下に行い、所要時間は5分程度です。
予防
予防としては、血流の悪化につながる行動をさけることが大切です。
1. 長時間、座り続けない、運転を続けない
難しい場合は、定期的に休憩をとり、立ち上がって歩きましょう。
どうしても休憩をとることができない場合には、肛門をキュッとしめるようにしてみてください。これだけでも血流のうっ滞は解消されます。
2. 排便時に長くいきむ習慣を見直す
トイレは5分以内で、長居しないようにしましょう
肛門は自分で見える部分ではないので、自己判断はやめましょう。肛門科を受診して、正しい診断のもとに、適切な治療をうけるようにしてください。