コラムColumn

慢性的な下痢でお悩みの方は少なくありません。ここ数年普通便はなく、検査をしても異常なし、整腸剤や下痢止めも効果なく、体質と思ってあきらめていたと言われる方もいます。
このような方の中に、実は胆汁酸が関係する胆汁性下痢というタイプの下痢が隠れていることがあります。
胆汁性下痢であれば、劇的に症状を改善させられることもあり、今回はそれについてお話ししたいと思います。
胆汁酸とは
胆汁酸とは、肝臓で作られる胆汁の成分の一つです。食事、特に脂肪分を含む食事をとると、胆汁が腸に分泌されます。
脂肪を消化・吸収しやすくするために働いており、通常、小腸で役割を果たしたあと、主に小腸の終わりの部分、つまり回腸末端で再吸収され、肝臓に戻って再利用されます。これを腸肝循環といいます。
何らかの理由で胆汁酸が十分に再吸収されず、多量に大腸へ流れ込むと、大腸での水分分泌を促したり、腸の蠕動を活発にしたりして下痢が起こります。
どのような人に起きやすいのか
1. 胆嚢摘出後の方
胆嚢は、一時的に胆汁を貯めておき、食事のタイミングで収縮、胆汁を分泌します。
胆嚢を摘出すると、胆汁が絶えず分泌され、胆汁酸が大腸に流れ込みやすくなるため、胆嚢摘出後から下痢が続く方がいます。
2. 小腸の病気や手術歴のある方
胆汁酸は主に回腸末端で再吸収されます。そのため、クローン病や回腸末端の炎症、回腸切除後などでは、胆汁酸の再吸収がうまくいかず、大腸に流れ込む胆汁酸が増えることがあります。
3. 検査では異常がないのに水様便が続く方
大腸カメラや血液検査で器質的な異常がなく、過敏性腸症候群(IBS)、特に下痢型IBSと言われている方の中にも、胆汁性下痢が含まれていることがあります。
症状
一般的な下痢と区別がつきにくいのですが、以下のような特徴が見られることがあります。
・ 食後に下痢しやすい、特に脂っこい食事の後に悪くなる
・ 急に便意が来る
・ 整腸剤や通常の下痢止めで十分に改善しない
・ 排便回数が多い

もちろん、これらの症状があるからといって、胆汁酸性下痢の可能性が高いというわけではありません。
慢性下痢には、大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染症、薬剤性下痢、甲状腺機能亢進症、糖尿病、自律神経異常、膵臓の病気、乳糖不耐症など、さまざまな原因があります。
そのため、長く続く下痢では、まず必要な検査を行い、危険な病気を除外することが大切です。
海外では、胆汁性下痢を調べるための検査としてSeHCAT試験や便中胆汁酸測定などが行われることがあります。
しかし、日本ではこれらの検査は一般的ではなく、実際の診察で、症状や病歴、大腸内視鏡検査などの結果を総合して判断し、後述する胆汁酸吸着薬への反応を見ながら可能性を考えていくことが多いです。
治療
強く疑った場合には、胆汁酸吸着薬のコレスチミドを試してみます。
コレスチミドは、本来は脂質異常症に使われる薬なのですが、腸の中で胆汁酸を吸着して、便と一緒に排泄させる働きがあります。
腸の中で胆汁酸を吸着する→ 胆汁酸による大腸への刺激が減る→ 水分分泌や蠕動が落ち着く→ 下痢が改善するという流れです。
食事では、脂肪分の多い食事により胆汁酸の分泌が増えるため、摂りすぎには気をつけます。ただし、極端な食事制限は必要ない場合がほとんどです。
まとめ
慢性下痢の中には、胆汁酸が大腸を刺激することで起こる胆汁性下痢が隠れていることがあります。
通常の消化器薬ではないのですが、胆汁吸着薬で長年の症状が劇的に改善されることがあるのです。
独りで悩んで、「体質だから仕方ない」「過敏性腸症候群だから治らない」とあきらめず、是非、消化器専門医に相談してみて欲しいと思います。







