コラムColumn
「肝嚢胞がありますね」と、健康診断や診察時の検査でいわれたことがある方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。経過観察となっているけれど、毎年指摘されてどういう異常なのだろうと気にする方もいると思います。
今回は肝嚢胞についてお話しておきたいと思います。
肝嚢胞とは
肝嚢胞とは、肝臓の組織に袋状に水がたまっている状態ををいいます。
種類としては、先天性(生まれつき)のもの、外傷によるもの、炎症に伴うもの、ウイルスや寄生虫などの感染によるもの、腫瘍性のものなどがあります。
肝嚢胞のほとんどが先天性のものであり、基本的には良性で心配は要りません。
女性に多くみられる傾向があることから、女性ホルモンとの関連を指摘されてはいますが、はっきりとした原因は分かっていません。
症状
肝嚢胞の多くは無症状であり、血液検査などでも特に異常は認められません。
ただし、良性であっても、中にはゆっくりと大きくなるものがあり、10cm以上になってくると、腹部の膨満感や胃やみぞおちあたりの鈍痛といった自覚症状を認めることがあります。また、嚢胞が胃を圧迫するようになると、お腹がすぐにふくれてしまい、少ししか食べれないと訴える方もいらっしゃいます。
先天性以外の場合も、嚢胞による症状は出ないことが多く、原因となっている病気の不調により、検査をして指摘されることが多いです。
先天性以外が原因となる疾患の例
エキノコックス嚢胞:キツネや犬が持っていることが多い「エキノコックス」という寄生虫に感染すると起こることがあります。
カロリ病:肝臓の中にある胆管の部分的な嚢胞性拡張を特徴とする遺伝性疾患であり、成人期に症状が出現することが多く、結石や胆管炎、胆管癌の合併が報告されています。
肝嚢胞腺腫・肝嚢胞腺癌:希にみられる疾患であり、肝嚢胞のフォロー中に嚢胞の大きさや内容が変化してきたことで診断に至るケースがあります。手術が必要となります。
検査と診断
自覚症状がないため、偶然発見されることがほとんどです。
つまり、肝嚢胞を念頭に検査が行われることは少なく、健診や腹部症状精査のために検査を行ったら、嚢胞がみつかったというケースが多いです。
検査としては、まずは、腹部超音波検査が一般的です。嚢胞が単発か多発か、嚢胞内の壁の厚みや隔壁の有無、しこりの有無などを確認します。
さらに精査が必要と判断された場合には、造影CT検査やMRI検査が行われます。
治療
検査所見で嚢胞の性状に問題がなく、特に自覚症状もなければ、経過観察で大丈夫です。しかし、嚢胞によって自覚症状を認める場合には、治療を考慮することもあります。
治療としては、嚢胞を穿刺して、内容液を抜いた後に薬液を注入したり、外科的に嚢胞の壁を部分的に切除して、水がたまらないようにする手術をします。最近は侵襲が小さく、再発が少ないことより、腹腔鏡手術が選択されることが多くなっています。
まとめ
肝嚢胞は、良性がほとんどで、自覚症状がなければ、特に治療は必要ありません。
しかし、頻度は少ないですが、中には感染症や外傷、腫瘍など別の疾患によって嚢胞がみられるケースもあります。
初めて指摘されたなら、1年後ぐらいには変化がないかをフォローしてもらうようにしましょう。その後のフォローは、それぞれの所見に応じて医師に指示をもらうようにしてください。