コラムColumn
超音波検査とCT検査は、それぞれ腹部領域において非常に有用な検査です。
当院には両方の検査機器がありますが、実際にどのような違いがあるのか、どう使い分けているかをお話します。
腹部超音波検査というのは、わりと多くの施設で診察室内に機器がおいてあり、電源をいれると1分ほどですぐに検査可能、迅速かつ簡便に行うことができます。体表に検査用のゼリーを塗り、超音波を発する機器から跳ね返ってきた超音波の情報を画像としてモニターに映し出します。
臓器の厚みや内容によって跳ね返りが異なることで、臓器内の異常(胆石や胆嚢ポリープ、胆管拡張、肝臓や膵臓、腎臓の腫瘤など)、臓器の損傷、腹腔内の出血や腹水、子宮、卵巣の腫れなどを描出していきます。
メリットとしては、体に害や苦痛、負担がなく、短時間で広範囲を検査することが可能で、気になる部分では集中的に時間をかけて観察することもできます。しかしながら、腸など内部に空気を含む管腔臓器やその奥の臓器では、超音波が届きにくく、内部の情報を得ることは困難となります。
また肥満の場合も同様で、患者さんの状態によって、検査精度がかなり異なってきてしまうというデメリットがあります。
一方、CT検査はX線を用いて体を輪切りにした情報をコンピューターによって画像化します。
腹部だけなら、およそ10秒程度で、全体を検査することができます。超音波検査と違って、検査医の技量や患者さんの状態に左右されることはなく、作成された画像を何度も見直すことで、見逃しのリスクを減らすこともできます。
また、アレルギーのリスクもあるため病院での検査となりますが、造影剤を血管内に注入して行う造影CTでは、その造影パターンによりさらに詳細な情報を得ることができます。ただし、得られる情報が多い分、診断にどれぐらい活用できるかは、読影医の知識や経験に大きく左右されることになります。
X線による検査であるため、被爆のリスクはありますが、当院のような最新のCT機器では、被爆線の低減と高画質を両立できるようになってきています。
実際の使い分けとしては、被爆を避けたい子供や妊婦では、超音波検査を優先します。また、実質臓器内の腫瘤や胆嚢ポリープなどの定期的なフォロー、少量の腹水の有無などの評価では、超音波検査の方が有用です。
しかしながら、腹部症状で来院され、腸閉塞や腸穿孔、憩室炎や虫垂炎など明らかに異常を疑うときに、その重症度や緊急性を判断するのには、CT検査の方が圧倒的に得られる情報量が多いといえます。
症状が強く、持続しており、自分でも不安が大きい場合には、より確実な診断のためにCT検査のできる医療機関を受診することをお勧めします。