コラムColumn
長年排便のたびに痔核や肛門ポリープが脱出してしまい、毎回指で押し戻している方は結構いらっしゃいます。それだけであれば、通常痛みを伴わないのですが、あるところから激痛がみられるようになり、悩みに悩んだ末に涙ながらに受診されるケースがしばしばあります。
何が起きているのでしょうか。それは随伴裂肛という病態かもしれません。
今回はつらい症状を伴うこの随伴裂肛について説明したいと思います。
随伴裂肛とは
通常の裂肛(切れ痔)は、硬い便や勢いよく出る下痢便により、便の通り道の皮膚が傷つくことで生じます。
一方、随伴裂肛の場合は、普段肛門の中に収まっている痔核やポリープといった出っ張りが外に飛び出す時に引っ張られて、その根元や隆起部分の皮膚が裂けることで発症します。
症状
排便するのが憂鬱になるほどの激しい痛みがあり、その激痛をこらえながら出っ張りを押し戻しても数時間痛みが続いたりします。痔核やポリープの脱出に伴って生じる傷が原因ですので、大抵は痛むようになる前から出っ張りを押し戻していたという経過があります。
随伴裂肛の診断は、しっかり肛門鏡で観察して傷を見つけることなのですが、痛みによってかなり肛門に力が入ってしまうため、じっくりとというのがなかなか難しかったりします。
出っ張りの奥にある傷に気づかないで、軟膏のみで様子を見られてしまっているケースもしばしばあります。
症状を聞いた時から随伴裂肛を疑って、出っ張りの周辺を短時間でしっかり観察することが大事なのです。
治療
原因となる痔核やポリープがある限り、排便のたびに傷が引っ張られるため、軟膏などでの保存的治療では限界があります。
通常の裂肛では簡単に手術を選択しませんが、随伴裂肛では手術で出っ張りの部分を切除して、傷を平坦にしてあげることで傷が治りやすくなり、劇的に症状が改善していきます。
随伴裂肛の手術は、通常の痔核の手術と比べても特別な手術手技を伴うものではありません。
ここまでお話ししたような症状でお悩みの方は、とにかくきちんと肛門科を受診されることをお勧めします。
一歩踏み出すことで、あれほどつらかった症状が思い出となり、すっきり解消するかもしれません。